アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所に見学に行ってきました。
今回は見学編です。
※撮影可能な資料の写真を多く掲載しています。
全体図
全体図はこのような感じ。
アウシュビッツの強制収容所は3か所あり、今回のツアーでは先にアウシュビッツ1(有名な門や死の壁があるところ)をまわったあと、バス移動してアウシュビッツ2(ビルケナウ)(表紙:線路が引き入れられているところ)をまわる内容です。
↓行き方などは前回の記事に書いています。
施設HP:アウシュビッツ・ビルケナウ博物館
公式チケット予約サイト:アウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館(Visit for individualsを選択)
住所:Więźniów Oświęcimia 20, 32-603 Oświęcim, ポーランド
営業時間:季節によって変更あり。
ツアー料金:85ズロチ(2600円ほど)
ツアー時間:3.5時間
(※円換算は2022年11月時点のものを元に、ざっくりですがわかりやすく1ズロチ=3円としています。)
アウシュビッツ1
※ここから、収容所内のさまざまな写真(撮影可のもの)を載せています。
ツアー参加者には受信機とヘッドホンが渡され、ガイドさんが案内・解説をしてくださるのに付いていきます。
こんなにたくさんの人が見学に来ていますが、とても静か。
大勢の足音と、ガイドさんたちの落ち着いた声だけが聞こえます。
「当時ならばこの門をくぐるともう二度と出てこれないのだ」などと思いながら歩きます。
今こうやってぞろぞろと中に入っている状況にふと、自分が収容者になったような感覚にもなりゾッとします。
みんな静かに、ヘッドホンから聞こえてくるガイドさんの解説に耳を傾けていました。
敷地内は赤レンガで作られた同じような棟が整然と並んでいます。
外から見ると普通の建物のように見えますが、中は収容所であったり人体実験などが行われるなど。
中には資料や遺品などが納められ、この地で起こった出来事を知ることができます。
収容された方々の写真。
女性も髪を刈り上げられ、番号が振られています。
ここへ連れてこられた日と死亡日の記載があります。
収容されてからたったの数か月で亡くなっている方が多く見えました。
トイレなどは決められた時間に一斉に。
身体の洗い場は長い流し台があるだけ。
連れてこれらた人たちから没収したもの。
収容されたのはユダヤ人、戦争捕虜、ジプシー、同性愛者、精神障がい者、身体障がい者など。
カバンには名前が書かれているものがありますが、それは没収される際に「荷物は戻ってくる」と信じ込ませるためにナチス軍側が書かせたもののようです。
男性ものと女性ものに分けられたおびただしい数の靴。
犠牲者の数はわかっているだけで約110万人。
本当は一体何百万人が犠牲となったのか、証拠隠滅などのせいもあり正確な数字はわかっていません。
このすべてに持ち主があったわけですから、言葉も出ません。
この山とは別に、小さいサイズの靴だけが集められた山があります。
子ども靴です。
とても写真にはおさめられませんでした。
やかんや洗面器などの生活品など。
もちもの全てが没収されます。
すべての荷物を没収され、「シャワーを浴びる」という名目で服を脱ぐよう指示されガス室へ。
ガス室の天井には中に入れられた人を落ち着かせるため、カモフラージュのシャワーヘッドが取り付けられていたとか。
シャワーから水が出ることはありません。
天井の穴から毒ガスが投げ込まれます。
殺虫剤として開発された農薬は、大量殺りくに使われました。
撮影禁止の部屋には、布の上にたくさんの三つ編みが積まれていました。
女性の髪の毛で織られた布でした。
ここは多くの方が銃殺された「死の壁」。
両隣の建物から外が見えないように、窓に目隠しが取り付けられています。
収容所生活のあまりの過酷さに、自ら電流フェンスへ向かい死を選ぶ人も多かったとか。
220ボルトの電流が流れていたそうです。
ガス室の中に入ることができます。(戦後に博物館がオリジナルの材料を用いて部分的に再構築されたもの)
c:ガス室、d:焼却炉。
ガス室と焼却炉が一体となっているつくり。
このガス室は戦前は弾薬庫でしたが、SS(ナチ党親衛隊)によってガス室として使われるようになりました。
石が積まれた壁を両脇にしながら、当時ならば入ったら二度と出ることのできない内部へと入っていきます。
これが犠牲者が見た最後の景色だったのだろうか…
と思うといたたまれません。
遺体を焼くための焼却炉。
犠牲者を焼く作業もまた一部の収容者が担っていたとか。
それゆえ収容所内での待遇(食べ物を多めにもらえるとか)が他の収容者よりも良かったそうですが、口止めとして彼ら自身も数か月後にはガス室送りにされていたそうです。
ガス室へ入っていくときの寒気のような不安感と、外へ出れたことへの安堵感を感じました。
アウシュビッツ2(ビルケナウ)
20分くらいの休憩をはさんで、見学場所を移動します。
ガイドさんの決めた集合時間・場所で次はアウシュビッツ2へ向かいます。
敷地へと引き込まれている線路が特徴の収容所がアウシュビッツ2。
アウシュビッツ1では収容しきれなくなったために3キロほど離れた地に広大な収容所が作られました。
ここは強制労働をさせるための場所ではなく、絶滅収容所。
最も大きなガス室があるところです。
『アンネの日記』の著者アンネ・フランクが両親、姉と共に連れてこられた場所でもあります。
アンネはその後、姉と共に別の収容所へ送られ、劣悪な環境のなか発疹チフスにかかったことが元となり亡くなりました。
線路上には車両が一台だけ展示されています。
この窓もない真っ暗な列車に大勢がぎゅうぎゅうになって運ばれます。
水も食料もろくに与えられずトイレ用の小さな桶があるだけ。
そんな長旅を経てやっとたどり着く場所がここ。
アウシュビッツ1で展示されていた「Selection」、命の選別が行われる場所です。
長旅の末に収容所にたどりつき列車からおりるとすぐ、医師の前に並びます。
パッと見で労働力として収容されるかガス室行きになるかが決められていったそうです。
右はガス室、左は強制労働、という風に。
アンネと同じ列車で送られてきた約1000人のうち約350人がガス室に送られ殺害されたそう。
全体では約75%の人が、収容所についてすぐガス室行き決定となったといわれています。
重労働ができないため、またユダヤ人撲滅のため、子どもはガス室行きです。
見学用として開放されているのは一部で、本当はもっともっと広い敷地でした。
今は建物がありませんが、当時はバラックがひたすらに立ち並んでいたそうです。
あまりにも広い敷地、収容された人の多さは想像を絶します。
線路に沿って奥まで歩きます。
振り返ると入口の門があんなに遠くに。
とにかく広いです。
一番奥には追悼の碑が。
様々な言語で記されています。
FOR EVER LET THIS PLACE BE A CRY OF DESPAIR AND A WARNNING TO HUMANITY, WHERE THE NAZIS MURDERED ABOUT ONE AND A HALF MILLION MEN, WOMEN, AND CHILDREN, MAINLY JEWS FROM VARIOUS COUNTRIES OF EUROPE.
AUSCHWITZ-BIRKENAU 1940-1945
アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所の最大のガス室跡地がここです。
戦況が悪化してくると、ナチス軍は退却する前にガス室を爆破して証拠隠滅をはかりました。
爆破されたそのままの状態で保存されています。
ガス室で殺されて焼かれた人々の遺灰は、ガス室のすぐ隣に埋められていました。
現在ではその場所に追悼の石碑が建てられています。
人々が収監されていた建物を見て行きます。
ガイドさんの「ガス室に入るまでの間待たされていた場所で…」「ガス室には全員が一度には入りきらないので…」など、恐ろしい言葉を聞きます。
「殺人工場」と呼ばれるだけあって、人をモノとして扱っている、とても機械的な印象が全体からひしひしと感じます。
ここに限らず、ツアー中の解説すべてが現実のものとは思えない恐ろしい内容です。
冬は極寒の地。-20℃にもなりますが暖房もないなか夜を過ごさなければなりません。
もともとはたくさんのバラックが建っていましたが、戦時中の資源不足のために取り壊して他のものへの使われたたため、跡地のようになっているとこと。
ツアー終了です。ここでガイドさんとはお別れです。
淡々と、でもしっかりと当時のことを教えてくださって感謝します。
広い、広い敷地でした。
想像を超えるツアーでした。
アウシュビッツ1とアウシュビッツ2(ビルケナウ)を無料で走るシャトルバス。
これに乗って最初にいたアウシュビッツ1に戻りました。
10分に一本の頻度でやってきます。
終わり
カメラを向けることがはばかられる資料ばかりでしたが、できる限り写真をたくさん撮って載せました。
でもいざブログを書こうと写真を見返したり調べものをしていると、気分が落ち込んで落ち込んで…。
最後まで目を通してくださったみなさま、ありがとうございました。
なんと言えばよいのかうまく言語化できませんが、今を生きる一人の人間として知っておくべきものを見たというか、色々と見せつけられて考えさせられました。
とてもとてもつらい見学ですが、来てよかったと心の底から思います。
年間に多くの人々が訪れる場所なので、個人でも行きやすいですしネット予約も簡単です。
特にロンドンからだとクラクフまで直行便が出ておりアクセスばっちりです。
ツアー会社に申し込むのもよし、個人でされているガイドさんに頼むのもよし。
機会があるならば是非、訪れてみてください。
ロンドンでエキシビション開催中
またロンドンでは2022年10月から Seeing Auschwitz というエキシビションが開催されています。
私は現地で見学できたのでこのエキシビションには足を運んでいませんが、アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所からの写真資料などを見れるようです。
Seeing Auschwitz
住所:81 Old Brompton Rd, South Kensington, London SW7 3LD
アクセス:サウスケンジントン駅から徒歩4分
閉館日:月曜日休み
営業時間:火-金→10-19時、土日→9-19時